「烈火ー!朝飯だぞー!!親父もさっさと起きやがれ!!!!」

此処、花菱家では俺のこの一言から朝が始まる。




花菱家には子供が二人いる。兄のと、弟の烈火だ。
弟の烈火は大の忍者好きで、いつか自分も忍になりたいと思っている。
兄のは極度のブラコンで、大の烈火好き。
忍を目指す弟を、心配しながらも陰ながら見守っている。
・・・これは、そんな二人と仲間の日常と非日常を記した物語である。













命の歯車はいつの時も酷で
















「「んじゃ、いってきまーすっ!」」
「おう!烈火ももいってこい。」


そして、いつもと変わらない朝。いつもとなんら、変わりようのない風景。
でも、出会いは突然やってくる。
まるで、これから起こる戦いの日々の始まりの合図のように・・・。

















***


























「烈火ぁ〜、烈火いるー??」

(きゃ〜っ!!先輩よっ!!!!)
先輩じゃん///突然どうしたんだろう!)


その時、クラス内は見えない歓声に包まれた。
それもそのはず、は入学当初から騒がれていたのだ。
それは、一年たった今でも変わらない。・・・むしろすごくなっているのに、本人は気付かない。
そのずば抜けた容姿・・・肩に付きそうな位の少し癖のある黒髪、瞳の色は深い紫で
肌は透き通るように白い・・・はもちろん、その見た目を裏切るような口の悪さや、性格も注目されるには十分すぎる。
つまり、話題の人物。そんな人がいきなりクラスにやってきたのだから、皆の反応も当然だろう。
だが、当の本人はそんなことには全く気が付いていない。
・・・まあ、そんな天然な所も好かれる要因の一つなのだが。







参ったなぁ・・・。今日は晩御飯買いに行く・って烈火に言うの忘れてた・・・。
しょうがないから俺はそのことを伝えに、烈火のクラスまで行った・・・のだが・・・





・・・いないじゃんっ!どこ行ったんだよ、あいつ!!






いくら放課後だといっても、普通ならまだ学校にいる時間帯だ。
なのに、もういない・・・。
俺が悩んでいると、烈火のクラスメイトの一人が


「あ!先輩っ!!花菱なら土門の奴に連れて行かれましたよ。」


なんだよ。また、喧嘩か。土門の奴も懲りないな。・・・まあ、好きな奴の為って気持ちは解らないでもないけど・・・

烈火が怪我したら許さん。

土門のせいで一緒に帰れなくなったし・・・あとでシメるか・・・。


土門への報復計画を練りながら、とりあえず俺は一人で買い物に行くことにした。
・・・この後、そのことを後悔するとも思わずに・・・。














***



















「・・・う゛〜。遅い。遅い遅い遅い遅い遅い、おそ〜いっ!!!!何やってんだよっ!!あの馬鹿はっ!!!!」


時刻は既に八時を回っている。いつもなら、もっと早く帰ってくる弟を心配して・・・dがとうとうキレ出した。


「オイオイ、。心配なのも解るが、あいつなら大丈夫だ。
 なんせ、この俺様の息子で、お前の弟なんだからよ。・・・信じてやれ。」


そう言って、兄弟の父―茂男はdの頭に手を置いて、髪をぐしゃぐしゃっと掻き回した。
dは俯きながら、今にも泣きそうな声で


「・・・わかってるよ、親父。でも、心配なんだよっ。・・・なんで俺、一緒に帰らなかったんだろう。
 ちゃんと、朝のうちに言って、一緒に帰ってく「ばかもん。んなこと考えんな。それに、二人共遅くなってみろ。
 俺の心臓がもたんだろうが。」

「でもっ!!「た〜だいま〜!!!!」


二人は一斉に声のした方を見た。


「わりぃ。親父、兄。遅くなっちまって。」





―今日の晩飯なに?





・・・なんて、今まで心配してたのに笑いながら、そう言われて・・・心配してたこっちが馬鹿らしくなる。



「な?大丈夫だったろ?」


親父が小声で、俺に言う。・・・本当だよ。


「よ〜、帰ってきたか。馬鹿息子。に余計な心配かけさせんじゃねーよ。」

そう言いながら、親父は烈火の頭を小突いて、向こうの部屋に消えた。
後には、少し気まずい雰囲気が残る。
俺は烈火を見た。俺より少し背の高い弟は、傷だらけだった。それは、刃物で切られたような傷で。
・・・一体何があったのだろうか。

「・・・どうしたんだよ、その傷。何があったんだよっ。」
「ん〜、後で話すな。・・・心配かけて、ごめん。」

そうして、花菱家は遅い夕食をとることになった。












***











それから烈火は今日起こったことを、影法師と柳の力のことを省いて、に話した。




「俺、姫の笑ってる顔が大好きだ!ずっと笑ってて欲しい。その為なら、命だって張れる。」

烈火は笑いながらそう言った。そんな烈火に、古い友人の面影が重なる。
彼も、烈火と同じことを、笑いながら言っていた。



―姫様の笑顔が好きだから。それ以上に、理由がいるのか?



やっぱり、烈火はあいつの息子だな。・・・そっくりだ。


「・・・そっか。そんなに大切な人が出来たか。」
「ああ!」


話を聞き終わった俺が、そう言うと烈火は嬉しそうに言った。
そんな烈火は、少し大人になったみたいで。
ほんの少し。ほんの少しだけ、寂しくなった。



兄も会えば、きっと姫を気に入るぞ!」









そうして、俺は彼女と再会する。
でも、今はそんな未来のことなんて解らない。
だから・・・


今日はもう寝よう。明日はまた来る。
そして、その日は新しい歯車が動き出す。
今のうちに休んでおこう。
この先、休む暇なんて無いのだから。